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2014年12月29日 (月)

得点期待値、得点確率の変動から見る盗塁成功率の境界線

盗塁成功率が何%以上あれば盗塁は有効なのか。それを求めます。

今回も敬遠の時と同じように盗塁の成功・失敗による得点期待値、得点確率の変動を見ていきます。
複数ランナー時でも盗塁シーンはあるのでしょうが、今回はシンプルにランナーが1人の時の6ケースで調べることにしました。

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データは2004~2013年までのNPBにおける得点期待値 (「勝てる野球の統計学 セイバーメトリクス」岩波書店より)

変動値からそれぞれのケースで盗塁成功時のプラス効果、盗塁失敗時のマイナス効果を意味します。
ちなみに得点期待値のほうの単位は得点、得点確率のほうの単位は率となります。
こうして見ると同じ二盗でも2アウトからの二盗は失敗時のマイナスが最も小さく
データからもリスクの少ない作戦ということが伺えます。ただリスクが少ないのと同時に
得られるリターンも最も少ないためここだけが特別盗塁すべきケースというわけでもありません。

この変動値から盗塁成功率の境界線を求めていきますが手法はいたって簡単なものです。
成功時の変動値に盗塁成功数Xをかけ、失敗時の変動値に盗塁失敗数Yをかける
そして両者を足した時の値が0になる時のXとYの比を求めるというもので
この時の X/(X+Y) が盗塁成功率の境界線ということになります。

式にすると
ax+b(1-x)=0 
x=-b/(a-b)
a…盗塁成功時の変動値 b…盗塁失敗時の変動値

計算するとこうなりました。

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得点期待値と比べ得点確率のほうが全体的に低めの数値になりました。
得点期待値、得点確率に共通して2アウトからの三盗で最も高い数値が出ましたが
実際の野球で考えてみても2アウトからの三盗は盗塁失敗時のリスクに比べ、盗塁成功時に得られるメリットは極めて小さく
ただでさえ難しい三盗をする選手(させる監督)がいないことからも理解できるところです。

アウトカウント別に出しましたが一般的な二盗の効果ということでまとめると
盗塁成功でそのイニングの得点期待値が0.171点、得点確率が13.7%上がり
盗塁失敗でそのイニングの得点期待値が0.400点、得点確率が19.4%下がる
得点期待値を求める場合の盗塁成功率の境界線は70%
得点確率を求める場合の盗塁成功率の境界線は59%
ということになります。

この盗塁成功率の境界線以上の選手は盗塁企画する価値がある(逆にこれ以下の選手は走らないほうがいい)
ということが言えますが、このデータをもってそういう選手が常に盗塁したほうが
いいかと言われればそういうわけではありません。
というのも例えば盗塁成功率80%の選手は(サインによる盗塁を除き)盗塁企画する際
自分が盗塁できると判断したタイミングで盗塁企画をした結果80%なわけで
今以上に盗塁企画を増やせば確実に盗塁できると確信できないケースも増えることにより
盗塁成功率は下がると考えられるからです。
また盗塁企画増により相手バッテリーの警戒度もおそらく高まるでしょう。


次に2014年シーズン盗塁数15以上の選手にこの数値を使って掘り下げてみます。
(三盗を記録している選手もいるのでしょうが公式記録からは二盗・三盗の区別が
できないため全て二盗扱いでの計算になります。アウトカウントも同様の理由から平均化します。)

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表中Aは盗塁による得点貢献度(年間)
式 0.171×盗塁成功数-0.400×盗塁失敗数

表中Bは盗塁企画時得点確率変動期待値
式 (0.137×盗塁成功数-0.194×盗塁失敗数)÷盗塁企画数

Aは盗塁による得点貢献度ということになりますが
この数字を見て思っていたよりも少なく感じた方は多いのではないでしょうか。

Bは盗塁企画時得点確率変動期待値
なんだこの14文字熟語はと言われてしまいそうですが
ようはその選手の1盗塁企画あたりに期待できる得点確率の上昇はどれくらいかというものです。

パリーグ盗塁王の西川を例に説明すると
得点確率を13.7%上げる盗塁成功が43回
得点確率を19.4%下げる盗塁失敗が11回
これを平均すると西川は1盗塁企画あたり得点確率を7.0%上げたということになります。

ちなみにこの数値がどれくらいのことを意味するのかというと
1盗塁企画あたり得点確率を仮に5%上げるということは20盗塁企画で
得点をあげるイニングを1回分増やすことになります。

無死1塁の得点確率がほぼ40%なのでこれを例を用いると
無死1塁のイニング20回分
・全て盗塁企画なしで得点確率40% 得点をあげるイニングが8回
・全て盗塁企画ありで得点確率45% 得点をあげるイニングが9回
となります。

勿論後者のほうは盗塁成功、盗塁失敗含めたものなので実際に20回では整数値にはならず
あくまで得点確率上昇の期待値としてです。

Bは1盗塁企画あたりの数値なので盗塁成功率と比例しており
Aは盗塁成功数、盗塁成功率がともに高い選手にいい数値が出るということになります。
こうした数字を見ることで漠然としていた盗塁の価値が見えてくるかと思います。

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