« 2013年 監督別初回バント率 | トップページ | 得点期待値、得点確率の変動から見る盗塁成功率の境界線 »

2014年12月14日 (日)

アウトカウント、ランナー状況で変化する敬遠効果

守備側のピンチで1塁が空いている時、打席に迎えた強打者よりも次の打者のほうが
打ちとりやすいと判断した際にとられる敬遠策。
敬遠策の成否は結局は次の打者との打力差次第ということになりますが
ここではアウトカウント、ランナー状況による敬遠効果を探ります。

まず敬遠の起こり得るランナー状況を挙げると
2塁、3塁、1,3塁、2,3塁 この4ケースが一般的でしょう。
それぞれ無死、1死、2死の3パターンがあるので計12のケースが考えられます。

これらのケースで敬遠をするということは
2塁なら1,2塁に 2,3塁なら満塁になりますが
その際の得点期待値の変動を見てみます。
(守備側目線なのでここからは失点期待値・失点確率と表記します。)

71
データは2004~2013年までのNPBにおける得点期待値 (「勝てる野球の統計学 セイバーメトリクス」岩波書店より)

当然ながらどのケースでも失点期待値は上がります。
ただ敬遠策を取るのは失点期待値というよりも
大抵試合終盤に1点も与えたくない場面で用いるもの
そこで次に失点確率の変動を見てみます。

72
データは2004~2013年までのNPBにおける得点確率 (同上)

失点期待値と比べ失点確率で見ると2ケースを除き上がっても1%程度、
中には失点確率が下がるケースも出てきました。

ただここで誤解しないでほしいのは
決して「1死2,3塁の時のみ敬遠策が有効というわけではない」ということです。
表の失点確率はあくまでここ10年のNPBの結果を平均化したもの
変動値も状況変化によるもので敬遠した時のデータということではありません。

総じて失点確率は上がりましたが、逆に言えば前後の打者にこの上昇した確率分を
マイナスに引き下げるほどの打力差があれば敬遠策は有効と言えるはずです。

もしも敬遠後も敬遠前もヒットでしか失点しないと仮定すると打率を用いることができ
例えば2死3塁→2死1,3塁(失点確率0.7%増)のケースなら
0.7%、打率にして7厘がその打力差ということが言えます。
ただし実際はヒットによる失点とは限らないのでこの仮定は大雑把な見方であることは否めません。

ところで1点取られたら負けという状況で2死3塁→2死1,3塁の敬遠では
1塁ランナーがいようがいまいが一見まったく関係なさそうですが失点確率は0.7%上昇しています。
それはなぜか
もう一例挙げると2死1,3塁→2死満塁の敬遠では失点確率が4.2%上昇しています。

おそらくランナー状況としての敬遠のリスクは
ランナーが増えることによる押し出しのリスクと考えられるのではないでしょうか。
当然そのリスクはランナー1人→2人の場合よりもランナー2人→ランナー3人になる敬遠のほうが大きくなります。

では逆に敬遠の効果とは何か
これは1塁を埋めることによる併殺可能性を高めることです。
ただ同じ併殺狙いでも満塁にする敬遠は
ホームフォースプレイが出来るようになり併殺パターンを増やすことができます。

この効果は既に2死の場合は得られないということになり、また無死の場合は1死と違い
併殺→チェンジとならず、併殺が取れても2死3塁のようなピンチが続く場合が出てきます。

ここまでをまとめると敬遠の効果・リスクは
A (無死、1死からは)併殺可能性を生む効果がある
B (無死、1死からは)満塁策にするとホームフォースプレイができ、A以上の併殺可能性を生む効果がある
C ただし無死では併殺を取れてもランナーは残りピンチが続く可能性がある
D ランナーを1人→2人にすることによる押し出しリスク
E ランナーを2人→3人にすることによる押し出しリスク
と5つの要素が考えられます。

もしかしたら他にもあるかもしれませんが僕はこの5要素から状況別で変化する敬遠効果を
ある程度説明できるのではないかと考えました。
分かりやすくするためにA-10、B-35、C+5、D+15、E+40と効果及びリスクを数値化して
先ほどの表の12の状況に当てはめてみます。

73

このA~Eの数値自体に根拠はなく、変動値から類推して設定したものですが
こうして数値化することによって、敬遠の効果&リスクの5要素がどう働いているかが
体系的に一目で分かるようになったのではないでしょうか。

同じ2,3塁からの敬遠でも
なぜ2死2,3塁→2死満塁からの敬遠は失点確率を4.3%上げ
なぜ1死2,3塁→1死満塁からの敬遠は失点確率を0.5%下げるのかという疑問も
敬遠の5要素を数値化したこの表が説明してくれます。

始めにも書いたように結局は敬遠する打者と次の打者との打力差で判断することにはなりますが
同じ敬遠でもアウトカウント、ランナー状況によって敬遠の効果&リスクは異なるため
この失点確率の変動値は考慮する必要があるものとして言えるのではないでしょうか。

« 2013年 監督別初回バント率 | トップページ | 得点期待値、得点確率の変動から見る盗塁成功率の境界線 »

采配」カテゴリの記事

コメント

敬遠についての分析、深いですね。
特に、敬遠のリスクとメリットからその効果が状況別に分けられていたので、任意の設定値でも説得力があります。
自分も鳥越さんの書籍は持っていましたが、あのデータから敬遠を調べる発想がなかったです。

分析というより推論ってとこでしょうか。
自分なりの敬遠の解釈ということで書かせてもらいました。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/598758/60806163

この記事へのトラックバック一覧です: アウトカウント、ランナー状況で変化する敬遠効果:

« 2013年 監督別初回バント率 | トップページ | 得点期待値、得点確率の変動から見る盗塁成功率の境界線 »