« ポジション別リプレイスメントレベル | トップページ | 2014年 野手 oWAR »

2015年3月 6日 (金)

ホームパークファクター跳ね返り係数

wRC+を出す際パークファクター補正をしましたがそのやり方について

各球団広さやフェンスの高さなどの異なる本拠地球場でシーズンの約半分の試合を行っています。
この本拠地球場の違いは個人成績にも影響を与えており、球場ごとの特徴を数値化したのがパークファクター(PF)です。

このPFを使って本拠地球場の差が与える成績差を補正するのですが、
実際のプロ野球では地方球場での試合があり、主催試合=本拠地球場での試合とはなっていません。
2014年シーズンの日本ハムを例に見てみると主催試合72試合の球場内訳は

札幌D 58
東京D  8
旭川  3
帯広  2
函館  1

となっており単純に札幌DのPFを成績補正として使うと地方球場分ズレが生じるということになってしまいます。

そこで僕は本来は球場ごとであるPFを「実際に試合を行ったホーム球場のPF」に置き換えて
「ホームパークファクター」と捉え、このホームPFを成績補正として使うことにしました。
上の日本ハムの例で言えば5球場72試合のホーム成績からホームPFを求めるということになります。

   ホーム球場で打った&打たれた本塁打数       ビジター球場で打った&打たれた本塁打数
=―――――――――――――――――――― ÷ ――――――――――――――――――――
      ホーム球場の試合数 or 打席数          ビジター球場の試合数 or 打席数

こちらがその計算式となりますが「本塁打数」とあるようにこれはホーム本塁打PFの計算式です。
一口にPFと言ってもホームランPF、得点PFのように指標の数だけPFを求めることができ
今回wOBAをPF補正するにあたり単打、二塁打、三塁打、本塁打この4つのホームPFを求めることにしました。

計算式の試合数 or 打席数となっている箇所がありますがこれはどちらで求めても構いません。
ただ打席数で計算した方が精度は高くなると言えます。
僕は更に精度を高めるため打席数のところを「打数+犠飛-三振」にして打球に占める割合で算出しています。
考え方としてはBABIPに近いものと言えば分かりやすいでしょうか。

ちなみにPFは年度ごとのばらつきもあるためデータは2013年、2014年の2年分です。
(ホーム・ビジターの成績はデータで楽しむプロ野球さんのデータを使用しました)
なお4種類のホームPFを求めるのに必要なデータのうち打ったデータは入手できたのですが
打たれたほうのデータが入手できなかったため多少精度が落ちますがそこは断念せざるを得ませんでした。

ホームパークファクター
131p

数値が1より大きければその打撃結果が出やすい
1より小さければその打撃結果が出にくいということになります。
この数値は地方球場も含むホームPFなので本拠地球場のPFというわけではありませんが試合数から
本拠地球場の特徴が強く反映されています。
PFは同一リーグ内での傾向を数値化したものですが特にセリーグのホーム本塁打PFで球団差が大きく表れました。
ホーム三塁打PFが異常に高い球団がありますがこれはその球団のホーム球場の特徴というよりも
三塁打の母数の少なさによるものと見たほうがいいでしょう。

このようにしてホームPFを出ましたがホームPFの数値はそのまま成績補正に使えるというわけではありません。
例えばヤクルトの選手はシーズン本塁打数が球場のおかげで1.587倍に増えたと言えるわけではなく
あくまでホームPFはそのチームにとってのホーム球場とビジター球場の比を意味します。
そこで成績補正に直接使える「跳ね返り係数」というものを出す必要がありますがこちらのグラフをご覧ください。

133hb

これはセリーグ各チーム144試合の主催球団をグラフにしたものですが
こうして見るとホームPFを出すのに使ったビジターの環境は微妙に違うことが分かります。
ホームPF補正は言うなれば、実際の「各チームのホーム試合数が全体の半分を占める環境」から
もしも「各チームのホーム試合数が均等な環境」だったらどれくらいの成績になるのか?を求めるもの。
そのため「各チームのホーム試合数が均等な環境」というのを計算上ではありますが作る必要がありますが
僕はこう考えました。

134hb

本来72試合のホーム試合を計算上12試合としてビジターの72試合に足し
この84試合分を仮想「各チームのホーム試合数が均等な環境」とすることにしました。
この仮想「各チームのホーム試合数が均等な環境」(84試合)と実際行われた環境(144試合)とで
各指標がそれぞれ何倍になったかの想定値=跳ね返り係数を求めました。

このやり方であれば同一リーグ内のチームでも同様に84試合分の同一リーグ共通の環境を作ることができます。
84試合と144試合のデータでは共通どころか全然条件が違うじゃないかと思われたかもしれませんが
ホームPFを出すのに打撃成績そのままでなく打球あたりの本塁打率(他も)として計算しているので
異なる試合数でも問題はありません。
ちなみにヤクルトのホーム本塁打PFだとこのようになります。(数値は打球あたりの本塁打率)

ホーム(72試合)  0.0412
ビジター(72試合) 0.0259
ホーム本塁打PF  1.587倍

実際の環境(144試合)          0.0336
同一リーグ共通の仮想環境(84試合) 0.0281
ホーム本塁打PF跳ね返り係数      1.195倍

同様に全てのチーム・全ての指標で算出した跳ね返り係数がこちらです。

ホームパークファクター跳ね返り係数
132p

この跳ね返り係数を使って山田のwOBAを補正してみます。

wOBA計算式

  0.558×(四球-故意四球)+0.588×死球+0.697×単打+1.075×二塁打+1.390×三塁打+1.665×本塁打
=───────────────────────────────────────────── × wOBAscale
                打数+四球-故意四球+死球+犠飛

通常の山田のwOBA

  0.558×(74-2)+0.588×8+0.697×124+1.075×39+1.390×1+1.665×29
=──────────────────────────────────── × 1.24
                    596+74-2+8+5

=0.406



次にPF補正した山田のwOBA
やり方は単打・二塁打・三塁打・本塁打をそれぞれの跳ね返り係数で割って計算するだけです。

  0.558×(74-2)+0.588×8+0.697×124÷1.007+1.075×39÷0.979+1.390×1÷0.933+1.665×29÷1.195
=──────────────────────────────────────────────── × 1.24
                        596+74-2+8+5

=0.392

こんなまわりくどいことをせず最初からwOBAのホームPFおよび跳ね返り係数を出せばいいじゃないかと
思った方がいるかもしれませんがそうしなかったのには理由があります。

なぜわざわざ単打・二塁打・三塁打・本塁打を分けてPF補正を行ったのかと言うと
打者の特徴によって球場による成績影響は異なるためです。
PF跳ね返り係数やPF補正の計算式を見ても分かるように特にホームランバッターは球場から受ける影響が大きく
逆に四球を選ぶ能力は球場による影響は受けないと言えます。

そのため同じようにヤクルトの川端でPF補正をすると

通常   wOBA.340
PF補正  wOBA.335

このように同じチームでもホーム球場の影響の度合いが異なることが分かります。
wOBAで直接ホームPF補正をしなかったのはこういった理由からです。

« ポジション別リプレイスメントレベル | トップページ | 2014年 野手 oWAR »

打撃」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ホームパークファクター跳ね返り係数:

« ポジション別リプレイスメントレベル | トップページ | 2014年 野手 oWAR »