« RE24から見る無死1塁でのバントの損益分岐点 | トップページ | RE24から見る無死2塁でのバントの損益分岐点 »

2015年10月 8日 (木)

無死1塁でのバントの損益分岐点 バント成功率による変動

RE24と実際の選手成績を使って無死1塁でのバントの損益分岐点を求めましたが
バント成功率によってこの損益分岐点がどの程度変動するのかを分析します。

前回、無死1塁でのバントの損益分岐点は
得点期待値を求める場合はOPS.332
得点確率を求める場合はOPS.609
と出ましたが、これはバント成功率82%、併殺打率10%という標準的な条件下でのものでした。
今回はここの条件を変えることによって、バント成功率の高い選手や併殺打率の低い選手の
無死1塁でのバントの損益分岐点を求めます。

バント成功率の方から求めていきますが
まず始めにバントがうまい選手のバント成功率はどれくらいなのかを設定する必要があります。
そのやり方は色々あるでしょうが当ブログでは各球団の中で最もバントのうまい選手を1人選び
2013年~2014年の2年間のべ24人の平均値を「バントがうまい選手のバント成功率」と設定することにしました。参照

このやり方で求めたところ、バントがうまい選手のバント成功率が90%
バントがうまい選手のデータを抜いて計算した標準的な野手のバント成功率が82% となります。
バントが下手な選手の設定は便宜上バント成功率の標準値との差を揃えるため74%と設定します。
ここで設定したバントがうまい選手、バントが標準的な選手、バントが下手な選手の3タイプを
略称としてAランク、Bランク、Cランクと呼ぶこととします。
つまり前回はBランクの損益分岐点を求めたということになります。

ではバント成功率Aランクの無死1塁でのバントの損益分岐点から求めていきます。
と言ってもそのやり方自体はこれまでとまったく一緒で計算式中の0.82を0.9に変えるだけです。

無死1塁での得点期待値の計算式(バント時)
A 0.687×0.9×0.98+1.417×0.9×0.02+0.499×(1-0.9)   =0.681
B 0.687×0.82×0.98+1.417×0.82×0.02+0.499×(1-0.82) =0.665

無死1塁での得点確率の計算式(バント時)
A 0.396×0.9×0.98+0.604×0.9×0.02+0.26×(1-0.9)     =0.386
B 0.396×0.82×0.98+0.604×0.82×0.02+0.26×(1-0.82)   =0.375

比較のためAランクとBランク2つの式を書きました。比較して分かるようにバント成功率が
82%から90%に上がることによって得点期待値で約0.016点、得点確率で約1%増えることが分かります。

前回と異なるのはこの部分だけで後は170選手の打撃成績からヒッティング時の得点期待値、得点確率を計算し
170人分の得点期待値利得と得点確率利得を求め同様のグラフを作ります。今回はグラフは省略しますが
回帰直線の式はこのようになりました。

OPS×得点期待値利得
A y=0.4412x-0.1623
B y=0.4412x-0.1463

OPS×得点確率利得 
A y=0.17x-0.1145
B y=0.17x-0.1035

ここでも比較のためAランクとBランク2つの式を併記しましたがご覧の通り
バント成功率がBランクからAランクになることによってどちらの回帰直線もy軸方向で下に移動する形となっています。
よって求める回帰直線とx軸との交点は右にずれることになり、損益分岐点の数値(OPS)は大きくなります。

それぞれy=0の時のxの値を求めると

 y=0.4412x-0.1623
 x=0.1623÷0.4412
 x=0.368

 y=0.17x-0.1145
 x=0.1145÷0.17
 x=0.674

無死1塁のバント成功率90%の打者が
得点期待値を求める場合、無死1塁でのバントの損益分岐点はOPS.368

無死1塁のバント成功率90%の打者が
得点確率を求める場合、無死1塁でのバントの損益分岐点はOPS.674

バント成功率が高くなった分バントの損益分岐点が上がり、バントさせたほうがいい選手の範囲が増えるということになります。

同様にバント成功率Cランク場合を見てみます。

無死1塁での得点期待値の計算式(バント時)
C 0.687×0.74×0.98+1.417×0.74×0.02+0.499×(1-0.74) =0.649
B 0.687×0.82×0.98+1.417×0.82×0.02+0.499×(1-0.82) =0.665

無死1塁での得点確率の計算式(バント時)
C 0.396×0.74×0.98+0.604×0.74×0.02+0.26×(1-0.74)   =0.364
B 0.396×0.82×0.98+0.604×0.82×0.02+0.26×(1-0.82)   =0.375

Bランクと比較してバント成功率が82%から74%に下がることによって
得点期待値で約0.016点、得点確率で約1%減っていることが分かります。
170人分の得点期待値利得、得点確率利得とOPSの相関関係をグラフにした回帰直線の式はこうなりました。

OPS×得点期待値利得
C y=0.4412x-0.1303
B y=0.4412x-0.1463

OPS×得点確率利得
C y=0.17x-0.0925
B y=0.17x-0.1035

Aランクの時とは逆にy軸方向で上に移動し、回帰直線とx軸との交点は左にずれることになります。
それぞれy=0の時のxの値を求めると

 y=0.4412x-0.1303
 x=0.1303÷0.4412
 x=0.295

 y=0.17x-0.0925
 x=0.0925÷0.17
 x=0.544

無死1塁のバント成功率74%の打者が
得点期待値を求める場合、無死1塁でのバントの損益分岐点はOPS.295

無死1塁のバント成功率74%の打者が
得点確率を求める場合、無死1塁でのバントの損益分岐点はOPS.544

バント成功率が低くなった分バントの損益分岐点が下がり、バントさせたほうがいい選手の範囲が減るということになります。


次に併殺打率の違いによってバントの損益分岐点がどの程度変動するかを見ていきます。
前回は10%で計算しましたがこれは2013年~2014年の併殺打率の平均値です。
併殺打率の差は打者走者の走力や打席の左右の違い(右打者約12%、左打者約8% 2013年~2014年)
によって生まれるものですが、ここでは併殺打の多い打者を併殺打率15%、併殺打の少ない打者を併殺打率5%と
設定して損益分岐点に与える影響を調べることとしました。

求め方ですがもう改めて説明するまでもないでしょう。
先ほどと同じように得点期待値、得点確率の計算式中の併殺打率10%の箇所を15%、5%に変えて計算していくだけです。
そうして計算した170人分の得点期待値利得、得点確率利得とOPSの相関関係をグラフにした回帰直線の式はこうなりました。

OPS×得点期待値利得
 併殺打多  y=0.4412x-0.1667
(併殺打標準 y=0.4412x-0.1463)
 併殺打少  y=0.4412x-0.1259

OPS×得点確率利得
 併殺打多  y=0.17x-0.1135
(併殺打標準 y=0.17x-0.1035)
 併殺打少  y=0.17x-0.0935

併殺打の多い打者、少ない打者、比較のため前回の併殺打率が標準的な打者の式を併記しました。
それぞれy=0の時のxの値を求めると

併殺打多
 y=0.4412x-0.1667
 x=0.1667÷0.4412
 x=0.378

 y=0.17x-0.1135
 x=0.1135÷0.17
 x=0.668

併殺打少
 y=0.4412x-0.1259
 x=0.1259÷0.4412
 x=0.285

 y=0.17x-0.0935
 x=0.0935÷0.17
 x=0.550

無死1塁の併殺打率15%の打者が
得点期待値を求める場合、無死1塁でのバントの損益分岐点はOPS.378

無死1塁の併殺打率15%の打者が
得点確率を求める場合、無死1塁でのバントの損益分岐点はOPS.668

無死1塁の併殺打率5%の打者が
得点期待値を求める場合、無死1塁でのバントの損益分岐点はOPS.285

無死1塁の併殺打率5%の打者が
得点確率を求める場合、無死1塁でのバントの損益分岐点はOPS.550

併殺打率が高くなるとバントの損益分岐点が上がり
併殺打率が低くなるとバントの損益分岐点が下がるということが分かりました。



バント成功率、併殺打率によってバントの損益分岐点がどの程度変動するのかを見てきましたが
最後にこの2つの変数に実際の選手のバント成功率、併殺打率(2013年~2014年データ)を入れ
2014年の打撃成績から各選手の得点期待値利得、得点確率利得を算出します。
つまり各選手が無死1塁で打たせるべきかバントさせるべきかがここから分かるということです。

ただバント成功率、併殺打率のデータは2年分ということもあり全ての選手で十分にあるとは言えず
母数が足りない選手については代替データを使用することとしました。以下はその設定です。

バント成功率
バント企画 20以上 その選手のバント成功率を使用
バント企画 10~19 Aランク(90%)、Bランク(82%)、Cランク(74%)のうち最も近いものに分類
バント企画 1~9  母数が少ないためBランク ただしバント成功率60%以下はCランク
バント企画 0   おそらく下手であろうということでCランク 主に外国人選手が該当

併殺打率
ヒッティング打席 20以上 その選手の併殺打率を使用(母数を増やすため無死1塁、無死1,2塁の合計データ)
ヒッティング打席 20未満 右打者(R)12% スイッチヒッター(S)10% 左打者(L)8%

このような設定で2014年シーズン打席数100以上の選手170人の無死1塁での得点期待値利得、得点確率利得を計算しました。

ちなみに表中のREG、RPGという項目は
run expectancy gain 得点期待値利得
run probability gain 得点確率利得  の略称です。

261
262


得点期待値利得は1人を除き全員がプラス(ヒッティングさせたほうがいい)に
得点確率利得は概ね最初に求めたバントの損益分岐点のOPS.609を境にプラスとマイナスに分かれました。
ところでこの表の中に一際目を引く選手がいます。OPS.748の打力ながら得点確率利得でマイナスとなった梵です。
なぜそうなったのか。梵はバント成功率96%、併殺打率22%と共に極めて高い数値を記録しておりこれがその理由です。
このように選手ごとのバント成功率、併殺打率を組み込んで計算しているため、OPS.609以上でも
バント成功率が高かったり、併殺打率の高い選手は得点確率利得がマイナス=バントさせたほうがいいとなるのです。

« RE24から見る無死1塁でのバントの損益分岐点 | トップページ | RE24から見る無死2塁でのバントの損益分岐点 »

バント」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/598758/62432893

この記事へのトラックバック一覧です: 無死1塁でのバントの損益分岐点 バント成功率による変動:

« RE24から見る無死1塁でのバントの損益分岐点 | トップページ | RE24から見る無死2塁でのバントの損益分岐点 »