RE24から見る無死1,2塁でのバントの損益分岐点
無死1,2塁のケースを求めます。
(RE24から見る無死1塁でのバントの損益分岐点をまだ読んでない方は先にこちらをご覧ください。)
無死1,2塁でもこれまでと同じように各打者の得点期待値利得、得点確率利得からバントの損益分岐点を求めます。
まずは得点期待値を求める場合から。
無死1,2塁での得点期待値の計算式(ヒッティング時)
無死満塁RE×四死球率
+無死満塁RE×単打率×0.49+(1+無死1,2塁RE)×単打率×0.27+(1+無死1,3塁RE)×単打率×0.24
+(1+無死2,3塁RE)×二塁打率×0.7+(2+無死2塁RE)×二塁打率×0.3
+(2+無死3塁RE)×三塁打率+(3+無死走者なしRE)×本塁打率
+一死1,3塁RE×0.14+一死2,3塁RE×0.04
+(二死3塁RE×0.88+二死2塁RE×0.05+二死1塁RE×0.07)×0.1
+一死1,2塁RE×(1-出塁率-0.18-0.1)
1つの長い式ですが見やすいよう小分けにしました。
無死1,2塁での単打は無死満塁(49%)、1点入っての無死1,2塁(27%)、1点入っての無死1,3塁(24%)
の3パターンに分かれ、二塁打でも2パターンに分かれます。
全体の18%が進塁打となりますがこちらもも一死1,3塁(14%)、一死2,3塁(4%)の2パターン存在します。
無死1,2塁での併殺打は1人ランナーが残ることになりますがその残り方で3パターンに分かれ
この0.1は2013~2014年の平均併殺打率の10%を意味します。
無死1,2塁での得点期待値の計算式(バント時)
一死2,3塁RE×バント成功率×0.97+無死満塁RE×バント成功率×0.03+一死1,2塁RE×(1-バント成功率)
バント成功のうち3%が無死満塁になっていますがこれは内野安打になったものです。
では実際の選手の成績を入れて計算してみましょう。2014年の大島の打撃成績を使って計算します。
2.2×(43+6)/636
+2.2×164/636×0.49+2.417×164/636×0.27+2.721×164/636×0.24
+2.974×18/636×0.7+3.04×18/636×0.3
+3.36×2/636+3.455×2/636
+1.158×0.14+1.335×0.04
+(0.371×0.88+0.321×0.05+0.214×0.07)×0.1
+0.905×(1-0.369-0.18-0.1) =1.459
無死1,2塁のバント成功率ですがこれまでも書いたように変数としてまた改めて分析するため
ここでは標準的な打者の平均値であるバント成功率69%を使って計算します。
1.335×0.69×0.97+2.2×0.69×0.03+0.905×(1-0.69) =1.220
2014年の大島の得点期待値利得は
1.459-1.220 =0.239
と求められました。
同様の計算を2014年の打席数100以上の選手170人でも行い、170人分の得点期待値利得を出しておきます。
次にこれらの得点期待値利得が各選手の打率、出塁率、長打率、OPSの4つの打撃指標のうち
どの打撃指標が最も強い相関を示すのかを知るべくそれぞれの相関係数を求めます。結果はこうなりました。
OPS 0.969
出塁率 0.964
長打率 0.865
打率 0.855
OPSが最も強い相関を示しました。
散布図にするとこのようになります。
(R=相関係数、Rの二乗=決定係数)
この回帰直線と得点期待値利得が0のx軸との交点がバントの損益分岐点となります。
回帰直線の式からy=0の時のxの値を計算すると
y=0.6055x-0.2305
x=0.2305÷0.6055
x=0.381
得点期待値を求める場合、無死1,2塁でのバントの損益分岐点はOPS.381と出ました。
続いて得点確率を求める場合です。
無死1,2塁での得点確率の計算式(ヒッティング時)
無死満塁RP×四死球率+無死満塁RP×単打率×0.49+1×単打率×0.51
+1×二塁打率+1×三塁打率+1×本塁打率
+一死1,3塁RP×0.14+一死2,3塁RP×0.04
+(二死3塁RP×0.88+二死2塁RP×0.05+二死1塁RP×0.07)×0.1
+一死1,2塁RP×(1-出塁率-0.18-0.1)
51%の単打、二塁打、三塁打、本塁打は得点確率100%なので係数が1となっています。
進塁打が2パターン、併殺打が3パターンに分かれるのは得点期待値の時と同じです。
無死1,2塁での得点確率の計算式(バント時)
一死2,3塁RP×バント成功率×0.97+無死満塁RP×バント成功率×0.03+一死1,2塁RP×(1-バント成功率)
こちらも2014年の大島の打撃成績を入れて計算します。
0.837×(43+6)/636+0.837×164/636×0.49+1×164/636×0.51
+1×18/636+1×2/636+1×2/636
+0.636×0.14+0.652×0.04
+(0.265×0.88+0.211×0.05+0.12×0.07)×0.1
+0.408×(1-0.369-0.18-0.1) =0.620
バント成功率0.69を入れて計算すると
0.652×0.69×0.97+0.837×0.69×0.03+0.408×(1-0.69) =0.580
2014年の大島の得点確率利得は
0.620-0.580 =0.040
と求められました。
こちらも先ほどと同様2014年の打席数100以上の選手170人分の得点確率利得と4つの打撃指標との相関係数を調べます。
結果はこうなりました。
出塁率 0.992
OPS 0.915
打率 0.883
長打率 0.771
無死1,2塁では出塁率が最も強い相関を示しました。
散布図にするとこのようになります。
(R=相関係数、Rの二乗=決定係数)
この回帰直線と得点確率利得が0のx軸との交点がバントの損益分岐点となります。
回帰直線の式からy=0の時のxの値を計算すると
y=0.4828x-0.1386
x=0.1386÷0.4828
x=0.287
得点確率を求める場合、無死1,2塁でのバントの損益分岐点は出塁率.287と出ました。
得点期待値を求める場合の無死1,2塁でのバントの損益分岐点はOPS.381と出ましたが
これも野手ならほぼ全員打たせたほうがいい数値と言えます。
得点確率を求める場合の無死1,2塁でのバントの損益分岐点は出塁率.287でした。
2014年の野手の平均出塁率はパリーグ.329、セリーグ.338なのでそれよりは低い水準の
この出塁率以下の選手の時バントが有効ということです。
得点確率を求める場合の最も強い相関を示す打撃指標は無死1塁ではOPS、無死2塁では打率でしたが
今回の無死1,2塁ではまた別の出塁率という結果になりました。
前々回の記事で少し触れましたがこの違いは塁状況の変化から説明できるものと考えられます。
無死1塁…単打と四死球がほぼ同価値、長打で走者生還も可能なため出塁率と長打率が求められる
無死2塁…四死球では進塁させられないため単打と価値が異なる、長打はあまり必要ないため打率が求められる
無死1,2塁…単打と四死球がほぼ同価値、長打はあまり必要ないため出塁率が求められる
上記3ケースにおいて得点確率利得と4つの打撃指標の相関係数で最も強い相関を示すのが
OPS、打率、出塁率となったのもこのように説明できるのではないでしょうか。
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