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2015年12月18日 (金)

RE24から見るバントの損益分岐点 対戦投手による変動

これまで様々な塁状況でのバントの損益分岐点を求めてきましたが、対戦投手については考慮してきませんでした。
今回はそれについて考えます。

本題に入る前にここまでの各状況でのバントの損益分岐点について振り返っておきます。

バントの損益分岐点(バント成功率野手標準時)
331

得点期待値を求める場合、4つの塁状況全てOPSが最も相関係数の高い打撃指標となりました。
その数値は低く、野手であればほぼ全員ヒッティングのほうが良いというものでした。
一方得点確率を求める場合、塁状況によって最も相関係数の高い打撃指標は異なる結果となりました。

これについては以前にも書きましたが

  無死1塁…単打と四死球がほぼ同価値、長打で走者生還も可能なため出塁率と長打率が求められる
  無死2塁…四死球では進塁させられないため単打と価値が異なる、長打はあまり必要ないため打率が求められる
無死1,2塁…単打と四死球がほぼ同価値、長打はあまり必要ないため出塁率が求められる

このような塁状況の違いから説明できるものだと考えられます。

さて無死1塁でのバントの損益分岐点(得点確率)はOPS.609とあるように打者のOPSがこの値より高いか低いかで
得点確率を上げるためにその打席でヒッティングのほうがいいか、バントのほうがいいかが判断できるのですが
あくまでこれはその打席での期待値としてのOPSということになります。

そのためその時の対戦投手が誰であるかということも考慮する必要があると言えるでしょう。
投手の実力を表す投球指標には防御率、WHIP、FIP等がありますがここでは野手に合わせるため被OPSを使います。
あまり普段目にすることはないかもしれませんが文字通り投手側から見たOPSです。
この被OPSをどのように使うのか簡単な例を使って説明します。

 リーグ平均OPSが.700の環境下でOPS.800の打者M、OPS.650の打者N
 被OPS.800の投手A、被OPS.700の投手B、被OPS.600の投手Cがいたとします。
 これらの打者・投手が対戦した時、期待値としてのOPSがどうなるのか。僕はこのように考えました。

OPS期待値
332

平均的な投手より被OPSが.100高く、打たれやすい投手Aと対戦した時はOPSが.100上がる
平均的な投手より被OPSが.100低く、打たれにくい投手Cと対戦した時はOPSが.100下がる
つまりリーグ平均OPSと各投手の被OPSとの差を打者のOPSに加算するという考え方です。
期待値としてのOPSを求める場合、このような計算をすれば対戦投手による影響を考慮することができます。

「いや打者Mは対戦投手に関わらずOPS.800打つバッターだ」
「打者Nは投手Cとの相性がいいのでむしろ普段以上の打撃が期待できる」

ひょっとしたらこのような反論が出てくるかもしれません。このような反論に答えるとするなら
「そういう見方もある意味ではその通り」というのが僕の答えとなります。

というのも今回はあくまで打たれやすい投手はどの打者にも打たれやすい、打たれにくい投手はどの打者にも打たれにくい
という普遍的な対戦投手による影響を求めるのを目的としているからです。

対戦時の相性で見るのがベストだと言う意見はある意味一番しっくりくるものではありますが
相性で見る場合の欠点として1シーズン通しても1投手相手に多くても20打席程度という母数の少なさが挙げられ
逆に母数を増やすため複数年データで見ようとすると今度はデータが古くなり現在の実力を反映しなくなってしまいます。

このリーグ平均差で見るというやり方は単純ではありますが普遍的な対戦投手による影響を知るには十分でしょう。


ここから2014年の投球成績から各投手の被打率、被出塁率、被OPS及びそれらのリーグ平均差を求めていきますが
1つある補正を行うことにします。それはBABIP補正です。というのもこれらの投球指標は
BABIPの影響を受けており数値にもBABIPが反映されているためです。BABIP(Wikipedia)

その方法は本塁打以外の安打(単打・二塁打・三塁打)に対し、「リーグ平均BABIP/その選手のBABIP」を
かけるというものです。つまりもしもBABIPがリーグ平均だったらというのを求める形となります。

ちなみに2014年の佐藤達也で計算してみるとこうなります。
333

上が実際の成績、下が単打・二塁打・三塁打それぞれに302/216をかけて計算し直した補正後の成績となります。
BABIPの影響を受けない投球指標と言えばFIPですが、このようにBABIP補正をすることによって
BABIPの影響を排した形の被打率や被OPSを出すことができます。

以下このような補正を行い2014年12球団の主力投手62人(規定投球回以上&50登板以上)の
被打率、被出塁率、被OPS及びリーグ平均差を求めました。

またこの62人のデータを使い被打率、被出塁率、被OPSと与四球率、奪三振率、K/BB、FIPの関係を見るべく相関係数も
調べたところ被打率は奪三振率と、被出塁率はK/BBと、被OPSはFIPと強い相関があるということが分かりました。

2014年の各指標のリーグ平均
334

335   336

337   338























































各投手のリーグ平均差から対戦投手ごとの期待値としてのOPS(打率、出塁率)を求めることができるようになりましたが、
ヒッティングかバントかの判断をする上でまだ課題もあります。それは対戦投手によるバント成功率への影響についてです。
例えばサファテや大谷のような豪速球投手はヒットが打ちにくい投手ですが、同時にバントもしにくい可能性があります。
またバントのしにくさは投球だけではなく投手の守備力も大いに関係します。
前田健太のようにフィールディングのうまい投手を相手にした場合のバント成功率は低く見積もる必要があるでしょう。


全9回に渡り「RE24から見るバントの損益分岐点」シリーズをお届けしてきましたが今回で一区切りとなります。
プロ野球においてノーアウトでランナーが出た場面でこの打者に打たせるべきかバントをさせるべきかという問いは
長年のテーマでもあったと思いますが、どれだけの打力があればヒッティングさせたほうがいいのかを
RE24等の統計データからバントの損益分岐点という形で1つの答えを出せたかなと思います。
今後も分析手法自体は変わらないと思いますが、バントデータが蓄積されるごとにアップデートしていく予定です。

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