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2016年1月25日 (月)

初回バントが愚策な理由 先制時勝率

バントは1点狙いの作戦であるため一般的に試合序盤ではすべきでないとされていますが
初回先頭打者が出塁すると決まってバントをさせる監督も少なくありません。
そこで今回はデータを使って初回のバントについて考えます。

初回バントの話の前に得点期待値と得点確率の違いを振り返っておきます。

得点期待値・・・そのイニングであげる得点数
 得点確率・・・そのイニングで1点以上あげる確率

得点期待値と得点確率、どちらが重要なのかと問われるなら野球は9イニングの合計得点を競うスポーツなので
基本的には得点期待値のほうが重要と言えます。ただし9回裏同点のような場面では得点確率のほうが重要となります。
そのため一般的にバントは試合終盤や延長戦でするもので試合序盤にバントはすべきでないと考えらます。

しかし一般的にすべきでないと思われている初回バントに肯定的な人も中にはいて、そういう人の言う初回バント
する理由に先制点の重要性があります。たしかに先制することで試合を優位に運べ勝率を高めることに繋がるとも
考えられ、初回バントを好む監督もこのような考えから初回バントをさせているのかもしれません。

ところで皆さんは野球中継でこのようなデータを見たことはないでしょうか?

 「××チームが先制した時の勝率は70%」

これがいわゆる「先制時勝率」というものです。(2013年~2014年公式戦全試合の先制時勝率は66.2%)

先制することでこんなに勝率が跳ね上がるのならやっぱり先制点は重要で
先制点をあげるためにも初回からバントすることは正しいじゃないか
と思った方がいるかもしれませんがその見方は誤りです。

この66.2%という先制時勝率のデータ自体はその通りなんですが、文字通り「先制した時」の勝率であり
「初回に1点先制した時」の勝率ではありません。
一口に先制と言っても8回に1点先制した試合もあれば、初回に3点先制した試合もあります。
同じ先制でもイニングや得点数が違えば先制の意味合い試合に与える影響はまったく異なるものと言えますが
これら先制した全ての試合の勝率を計算したのが先ほどの先制時勝率というわけです。

初回1点先制の効果を単なる先制時勝率では量れないことは理解してもらえたと思いますが
じゃあ初回1点先制時の勝率はどの程度のものなのかは気になるところです。
そこでこの条件での先制時勝率を調べてみることにしました。(対象は2013年~2014年公式戦全試合)

 初回1点先制時の勝率 56.7%

イニングや得点数を考慮していない通常の先制時勝率(66.2%)に比べるとかなり低い数値となりました。
ただこの値だけでは初回1点先制の効果がどれほどのものなのか分からないので
次に初回という条件は変えず先制点が2点の場合を調べてみます。

 初回2点先制時の勝率 64.9%

1点先制時に比べ大分勝率が上がりました。同様に3点以上の場合も調べてみると

 初回3点以上先制時の勝率 74.7%

2点先制時に比べかなり勝率が上がりました。

初回の先制点が1点、2点、3点以上となるにつれ勝率も高くなるという結果が出ましたが
考えてみれば1点先制よりは2点先制、2点先制よりは3点先制のほうがいいのは決まっていて
この事自体はある意味当然の結果と言えます。


ここまで先制時勝率とは何か、初回の得点別先制時勝率について見てきましたが
これらを踏まえた上で初回バントすることによって得点数がどうなるのかを見ていきます。

ここでは初回無死1塁で2番打者がヒッティングをした場合とバントをした場合とで得点分布にどのような違いが
見られるのかを調べました。(対象は2013年~2014年公式戦全試合)
それをグラフにしたのがこちらです。

34

1点をあげるケースが多いのはバントをした場合
2点及び3点以上をあげるケースが多いのはヒッティングをした場合ということが分かります。

元々バントは1点狙いの作戦であるためこの結果自体は予想通りと言えますが、これを見る限りバントは1点狙いの
作戦というよりも複数点をあげる確率を低くしてしまう作戦と言ったほうが適切かもしれません。
このことは先ほど出した先制時勝率にも言えることで、初回バントは複数得点先制することによる勝率の大幅増を
1点先制による勝率の微増に変えてしまうものです。

試合終盤ではまた話は変わってきますが、初回においては1点先制、2点先制、3点以上先制の得点別先制時勝率に
有意な差があり、1点のみをあげる割合こそ増やすものの複数点をあげる割合を減らしてしまうバント策は勝率という
観点からもヒッティング時より劣るものと言えます。それゆえ初回バントは愚策であるというのが今回の僕の結論です。

ちなみに今回調べた中で出てきた得点期待値、得点確率のデータはこのようなものでした。

・初回無死1塁(2番打者限定)

得点期待値
ヒッティング時 1.037 バント時 0.766

得点確率
ヒッティング時 48%  バント時 45%

得点期待値、得点確率共に一般的な無死1塁での得点期待値、得点確率より高めの数値となっていますが
これは初回無死1塁(2番打者限定)という条件であるために必ず後続打者が3番4番に回るイニングとなるためです。

得点期待値では大差をつけヒッティング時が上回る結果となりましたが、得点確率でもヒッティング時のほうが高い
という結果となりました。当ブログの過去の記事「無死1塁でのバントの損益分岐点」でOPS.609以上の打者であれば
バントよりヒッティングのほうが得点確率は高くなるという分析結果を出しましたが、今回調べた2013年~2014年の
12球団の2番打者(スタメン)の平均OPSは.646となっておりバントの損益分岐点からもヒッティングのほうが得点確率は
高くなると言えるものでした。

今回のデータは2013年~2014年の12球団から平均化した2番打者から求めたという形となりますが
初回バントを考えるにあたりそもそもどういう選手を2番に置くべきかという観点の考察も必要と言えそうです。
次回はこの2番打者像について考えます。

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