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2016年10月31日 (月)

RE-Mから見る無死1塁でのバントの損益分岐点

約1年前、RE24から見る無死1塁でのバントの損益分岐点というタイトルで
無死1塁ではどんな打者の時バントが有効になるのかを分析しましたが今回はそのアップデート版です。

おかげさまで前回の「バントの損益分岐点」シリーズは当ブログの中でも好評で多くの方に見ていただくこととなりました。
今回はそのアップデート版ということで前回は計算に含めなかったエラー、併殺打以外のダブルプレー
これらのデータも加えたものとなります。そのため基本的な分析手法は前回と同じです。
早速アップデート版と行きたいとこですがその前に前回の記事で1つ謝らなければならないことがありまずはその説明から。

Rem
データは2004~2013年のNPBにおける得点期待値 (「勝てる野球の統計学 セイバーメトリクス」岩波書店より)

前回の記事でこの状況別得点期待値表のことをRE24と説明していましたが、
厳密にはRE24とはこの表を使い打者評価した打撃指標の名称であり
この表自体がRE24というわけではありません。
RE24の考え方を用いた分析という意味では前回のタイトルも間違ってはいないのですが
誤解を生む説明となってしまったためこの場にて謝らせていただきます。

ではそうなるとこの表の名称は?ということになると思い、海外の野球サイトで調べてみたところ

 Run Expectancy Matrix

表の名称としてはこの言葉が適切であるということが判りました。今回の記事タイトルのRE-Mはこれを略したものとなります。
そしてもう1つ

Rpm
データは2004~2013年のNPBにおける得点確率  (同上)

この状況別得点確率表の名称も調べたところ

 Run Frequency Matrix
 Run Probability Matrix

こちらはこの二通りの呼び方をされているようで
当ブログではRun Probability Matrixの方から略称としてRP-Mを使うことにします。

今回もこの状況別得点期待値と状況別得点確率のデータを使ってバントの損益分岐点を求めます。

さてこの24個の得点期待値・得点確率が一体どうバントの損益分岐点に繋がるのか
基本的な考え方としてはある打者が無死1塁で打席を迎えその打席が終了した時、得点期待値及び得点確率が
ヒッティング時、バント時にどれだけ変化したのかこの2つの数値を比較し
その打者には無死1塁で打たせた方がいいのかバントさせたほうがいいのかを判断するという形となります。
これだけでは分かりにくいかと思うので実際に選手のデータを使って説明します。

561

このように無死1塁でのヒッティング時の打撃結果は極稀なケースを除いて上記の10通りに分かれます。
打撃結果の右の数値はそれが起こる確率でちなみにこの赤字の部分は
2015年の中日・平田の打撃成績から求めたものとなっています。
(合計しても100%とならないのは1%以上のものを四捨五入しているためでデータ上は100%です)
同じダブルプレーでもゲッツーと併殺打で分かれていますがこのゲッツーとは併殺打にならない併殺
ライナーゲッツーのことを意味します。

表の見方としては平田は12%の確率で四死球を選び無死1、2塁(得点期待値 1.417 得点確率 0.604)になる
17%の確率で出る単打はそのうち25%が無死1、3塁(得点期待値 1.721 得点確率 0.831)になるということを意味します。
これら全てを計算し選手ごとの打撃結果の確率に応じた得点期待値、得点確率の加重平均を求めます。
計算してみたところ無死1塁での平田のヒッテング時の得点期待値、得点確率は
得点期待値 0.894 得点確率 0.417 となりました。

続いて無死1塁でバントした場合

562

無死1塁ではバント時の打撃結果は上記の5通り。
ヒッティング時は併殺打とライナーゲッツーを分けていましたがこちらは区別せずダブルプレーとしてまとめています。
バント成功率81%は当ブログで調べた2013~2015年の標準的な野手のバント成功率からです。
このバント成功率は打者によって変わってくるもので、後に選手ごとのデータを入れて計算したものも出しますが
ここではバントの損益分岐点を求めるにあたり固定値で計算します。

ヒッテング時の時と同じように計算したところ標準的な野手の無死1塁でのバント時の得点期待値、得点確率は
得点期待値 0.677 得点確率 0.378 となりました。

更に比較のためもう1人別の選手(2015年の中日・桂)でも同様の計算を行い
2選手のヒッティング時、バント時の得点期待値(RE)、得点確率(RP)を表にしたのがこちらです。

56g

上の得点期待値では2人ともヒッティング時のほうが高く
下の得点確率では平田はヒッティング時、桂はバント時のほうが高くなるという結果となりました。
得点確率すなわち1点狙いの場面では平田のような打者には打たせたほうが、桂のような打者には
バントをさせたほうがいいということです。

このヒッティング時とバント時の得点期待値の差(&得点確率の差)
これらの数値を当ブログではそれぞれ得点期待値利得(RE-G)、得点確率利得(RP-G)と呼び
この値がプラスになるかマイナスになるかによって打たせるべきかバントさせるべきかの判断基準としています。

タイトルにもあるバントの損益分岐点とはまさにこの数値が0になる時のことで
先ほどの平田、桂を含む2015年打席数100以上の選手185人の得点期待値利得、得点確率利得から
どういう打者の時に0となるかを求めます。


ところでバントの損益分岐点となるのはどういう打者かを探るにあたって
打者をどの打撃指標で見るかを決める必要があります。

その決め方ですが185人の得点期待値利得と各選手の打率、出塁率、長打率、OPSの4つの
打撃指標との相関係数を調べ、最も相関の強い打撃指標で見るというやり方を取りました。
これを見ることで無死1塁で得点期待値を増やすのにどういう打撃が求められているのかが分かります。
得点期待値利得と4つの打撃指標との相関係数はこのようになりました。

OPS  0.980
出塁率 0.948
長打率 0.887
打率   0.860

OPSが得点期待値利得との相関で最も強いという結果となりました。
これを散布図にするとこのようになります。

563

この図から打者のOPSが高くなるにつれて得点期待値利得が高くなることが分かります。
図の赤い線はデータ群の分布傾向を一次式で表した回帰直線ですが
この回帰直線と得点期待値利得が0(y=0)、つまりx軸との交点がバントの損益分岐点ということになります。
回帰直線の一次式にy=0を代入するとxの値は

 y=0.4483x-0.1482 
 x=0.1482÷0.4483
 x=0.331

得点期待値を求める場合、無死1塁でのバントの損益分岐点はOPS.331と出ました。

得点確率でも同様のやり方です。
得点確率利得と4つの打撃指標との相関係数は

OPS  0.979
出塁率 0.948
長打率 0.885
打率   0.877

こちらもOPSが最も強い相関を示すという結果となりました。
散布図にすると

564

回帰直線の一次式にy=0を代入するとxの値は

 y=0.1744x-0.1038 
 x=0.1038÷0.1744
 x=0.595

得点確率を求める場合、無死1塁でのバントの損益分岐点はOPS.595と出ました。

ちなみに前回出した無死1塁でのバントの損益分岐点は
得点期待値を求める場合がOPS.332
得点確率を求める場合がOPS.609
と、ほぼ同じような結果でした。
やはり無死1塁でのバントの損益分岐点はこのあたりに落ちつくということなのでしょう。



最後に途中でも触れましたが各選手のバント成功率、併殺打率を考慮した場合の
得点期待値利得、得点確率利得を出すこととします。
バント成功率、併殺打率共に2013年~2015年の3年分のデータを使用するのですが
母数が十分でない選手も多くそのような選手には以下のランク分けした代替データを使用しています。

バント成功率(無死1塁)
バント企画 20以上 その選手のバント成功率を使用
バント企画 10~19 Aランク(89%)、Bランク(81%)、Cランク(73%)、Dランク(65%)のうち最も近いものに分類
バント企画 1~9  母数が少ないためBランク、Cランクのうち最も近いものに分類 ただしバント成功率50%以下はDランク
バント企画 0   バント経験がほとんどなくおそらく下手であろうということからDランク 主に強打者が該当

併殺打率
ヒッティング打席 20以上 その選手の併殺打率を使用(無死1塁、無死1,2塁の合計データ)
ヒッティング打席 20未満 右打者(R)12% スイッチヒッター(S)10% 左打者(L)8%

バント成功率のランクですが
Aランク NPBのバント成功率上位12人の平均レベル
Bランク Aランクを除く野手のバント成功率の平均レベル
Cランク 野手標準レベルのBランクよりは劣るレベル
Dランク 投手のバント成功率の平均と同じくらい下手なレベル
説明するならこんな感じです。

このような設定で2015年シーズン打席数100以上の185人の無死1塁での
得点期待値利得(RE-G)、得点確率利得(RP-G)を計算しました。

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個々のバント成功率、併殺打率を反映したことで
無死1塁で打たせるべきか?バントさせるべきか?の個人別データとなっています。

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