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2017年12月23日 (土)

無死1,2塁から2点を取るためにはバントとヒッティングどちらを選ぶべきか

新たに取得した「状況別2得点確率表」のデータを使い、無死1,2塁から2点を取るための作戦を考えます。

当ブログではこれまで
無死1塁 無死2塁 無死1,2塁 一死1塁
の4つのケースにおいて、どれくらいの打力であればヒッティングさせたほうがよく
どれくらいの打力であればバントさせたほうがいいかを探るバントの損益分岐点シリーズを行ってきました。

前回の2015年データを使って検証した無死1,2塁でのバントの損益分岐点でも得点期待値と得点期待
すなわち多くの得点を取るためと1点を取るための2種類のデータ分析を行いましたが
実際の野球でもよくある無死1,2塁から2点が欲しい場合に対応したバントの損益分岐点
はありませんでした。今回はこの無死1,2塁から2点を取るためのバントの損益分岐点を求めます。


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データは2016年のNPBにおける得点期待値(当ブログ調べ)

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データは2016年のNPBにおける得点確率(当ブログ調べ)

もはやお馴染みの表となっているかもしれませんが上の表が状況別得点期待値表 Run Expectancy Matrix
下の表が状況別得点確率表 Run Probability Matrix(もしくはRun Frequency Matrix)です。

これまでこの2つの表のデータがあることで得点期待値を求める場合と得点期待を求める場合の2通りのバントの損益分岐点
を出すことが出来たのですが、2点を取るためのバントの損益分岐点を求めるためにはこのどちらでもない
いわば「状況別2得点確率表」が必要でそれが見つからなかったため断念していたというのが実情でした。

そこでデータが無いのであれば自分で作ってしまおうということで
1年かけてNPB公式サイトから2016年公式戦の全ての塁状況及び得点結果を集計し状況別2得点確率表を作成しました。

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データは2016年のNPBにおける2得点確率(当ブログ調べ)

2得点確率とはその時点からそのイニングで2点以上あげた確率ということになります。
見ての通り上にある状況別得点確率表(1点以上あげた確率)と比べれば軒並その確率は下がります。

今回はこの状況別2得点確率表を使いこれまでと同じ手法でバントの無死1,2塁から2点を取るためのバントの
損益分岐点を求めていきます。ここからはバントの損益分岐点の具体的な計算方法の説明となりますが、
この表のデータを見て早速こう思った人がいるかもしれません。

 無死1,2塁の2得点確率は41.0%
 一死2,3塁の2得点確率は39.2%
 仮に無死1,2塁からバントを100%成功させたとしても2得点確率は下がるので、
 どんな打者であっても2点欲しい場合ではバントをすべきではない

結論から言うとそのような見方は誤りです。
たしかに塁状況の比較という意味では錯覚しやすいデータではありますが、その時の打者がバントを
すべきか否かを問う場合、この2つの数値で比べることは正しくありません。
ここで比べるべきはバント時の2得点確率とヒッティング時の2得点確率、この2つの数値だからです。

無死1,2塁からバントを成功させ一死2,3塁にした場合  (2得点確率 41.0%→39.2%) 
これ自体はその通りなのですが比較対象となるヒッティング時は (2得点確率 41.0%→?%)
この?%の部分ということになります。この?%は例えばヒットで無死満塁となれば61.9%、逆に凡打で一死1,2塁となれば
25.1%となるように打者の打力次第で変わるものと言えます。当然ながら100%ヒットを打つ打者も100%アウトになる打者も
いなく打者ごとにその確率を加重平均することで初めて各打者のヒッティング時の2得点確率を出すことが出来ると言えます。

文字だけの説明では分かりにくかったかと思いますのでここからは実際に選手のデータを使って見ていきます。
まずは2016年の西武・中村の場合です。

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2RP・・・2得点確率の略称
ゲッツー・・・併殺打が記録されないライナーゲッツー
併殺打・・・併殺打が記録される内野ゴロによるダブルプレイ

表の赤字部分は中村の成績から出した確率(分母は出塁率と同じ)、黒字部分は2016年のNPB平均の打撃結果の確率となります。
このようなデータから求めた加重平均の0.391が中村の無死1,2塁でのヒッティング時の2得点確率ということです。
もう一人西武・炭谷の場合も見てみましょう。

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こちらも計算すると炭谷の無死1,2塁でのヒッティング時の2得点確率は0.352となります。

更に先ほど無死1,2塁からバントを成功させた場合の一死2,3塁の2得点確率は39.2%とありましたが
こちらも現実にはバントが100%成功するわけではないので、失敗時と合わせた確率計算の必要があります。
それを表にしたのがこちらです。

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無死1,2塁の野手の標準的なバント成功率63%で計算するとバント時の2得点確率は0.357となりました。
このバント時の確率と選手ごとのヒッティング時の確率を比べることで

 中村  0.391 - 0.357 = 0.034
 炭谷  0.352 - 0.357 = -0.005

無死1,2塁から2点が欲しい場合
打者中村であればヒッティング、打者炭谷であればバントしたほうがいい
とこのようにデータを使ってバントの判断をすることができるようになります。

なおこのヒッティング時とバント時の2得点確率の差を当ブログでは「2得点確率利得」と呼ぶこととします。
バントの損益分岐点とはまさにこの2得点確率利得が0になる時のことで、どれくらいの打力の時に0になるかを
求めるというわけです。


次にこの「どれくらいの打力」をどの打撃指標で見るのかを探ります。
ここでは各選手の2得点確率利得と各選手の打率、出塁率、長打率、OPSの4つの打撃指標との相関係数から判断しました。
(対象は2016年シーズン打席数100以上だった169人)

2得点確率利得との相関係数
打率   0.845
出塁率 0.947
長打率 0.880
OPS  0.975

2得点確率利得に対してはOPSが最も強い相関を示しました。散布図にするとこのようになります。

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                              (R=相関係数、Rの二乗=決定係数)

この図からも2得点確率利得がOPSにほぼ比例しているということが分かります。

図の赤い線はデータ群の分布傾向を一次式で表した回帰直線です。
この回帰直線と2得点確率利得が0となる、つまりx軸との交点がバントの損益分岐点ということになります。

回帰直線の一次式にy=0を代入すると

 y=0.1759x-0.0938
 x=0.0938÷0.1759
 x=0.533

無死1,2塁から2得点を求める場合、バントの損益分岐点はOPS.533となりました。
つまり打者OPSが.533より低ければバント、高ければヒッティングしたほうが2点をあげる確率は高くなるということです。

ちなみに同じデータ群から無死1,2塁から得点期待値を求める場合と得点確率を求める場合の
バントの損益分岐点も調べたところ

得点期待値  OPS.384(相関係数0.969) 
得点確率  出塁率.275(相関係数0.994) 
でした。


最後に補足としてバント成功率の影響についても触れておきます。
無死1,2塁から2点を取るためのバントの損益分岐点はOPS.533と出ましたが
この結果は野手の標準的なバント成功率63%という設定下でのものであるため、当然打者のバントの
上手さによってこの値は変動するものと言えます。

そこでここでは打者のバント成功率によってどれだけの変動があるかを調べます。
調べると言ってもやり方は簡単で、始めのバント時の計算式の数値を変えるだけで求められます。

2013~2016の4年分のデータから
各球団の最もバントのうまい選手12人の平均をバントの上手い選手(バント成功率71%)
バントの上手い選手を除いた野手の平均をバントが標準レベルの選手(バント成功率63%)
バントの下手な選手(バント成功率55%)と設定した3通りで調べます。

また固定値だった併殺打率も併殺打の少ない選手(5%)、平均的な選手(10%)、多い選手(15%)の3通りを加え
3×3=9通りのバントの損益分岐点を求めました。

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真ん中のOPS.533は始めに出したバントの損益分岐点です。ここを中心に

上(併殺打少)か左(バント下手)にいくにつれ、バントの損益分岐点が低くなる
つまりバントさせたほうがいい打者は減る

下(併殺打多)か右(バント上手)にいくにつれ、バントの損益分岐点が高くなる
つまりバントさせたほうがいい打者は増えるということになります。

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