2017年 推定勝利数から見た投手力
前回出したリード時勝率を使って新たな投手力の分析を試みます。
(前回同様この記事における勝率は9イニングでの勝率で延長勝利は含まれません。またコールドゲームも除きます。)
(赤の背景はリーグ平均より10%以上高い箇所、青の背景はリーグ平均より10%以上低い箇所)
こちらは前回出した6回終了時、7回終了時、8回終了時に1~3点リードしていた時の各球団のリード時勝率となりますが、
これはあくまで条件を絞ったうえでの勝率に過ぎないため打力の影響も含まれてるデータであることは否めませんでした。
そこでここから打力の影響を排した投手力のデータを作るのにあたり僕は推定勝利数を使った分析方法を考えました。
7回の投球結果
この表は冒頭の表の6回終了時で投げた投手つまり7回に投げた投手を無失点時と失点時に分けたデータとなります。
数値が多いのでソフトバンクを例に一つずつ説明しますと
1~3点リードしている時ソフトバンクの7回に投げた投手(55回)のうち85%(47回)が無失点、15%(8回)が失点。
そしてそれぞれ無失点だった時の勝率が98%(46回)、失点した時の勝率が75%(6回)ということを意味します。
無失点・失点(割合)の数値はそのまま各球団の1~3点リード時の7回に投げる投手の出来としてそのまま見ることができますが
無失点時・失点時(勝率)の数値にはその後の投手力や打力が含まれます。
リードしていた試合において7回が無失点でも8回9回の投手が失点すれば勝率は下がり、7回に投げた投手が失点したとしても
打力の高いチームであればその後逆転するなどして勝率が高くなると言えますが、ここはそういった要素を表しています。
タイトルにもある推定勝利数が一体何のことか説明していませんでしたが、ここで言う推定勝利数とは一言で言うなら
「リード時の7回に投げる投手がリーグ平均レベルだった場合の各球団の推定される勝利数」ということになります。
ここから何が分かるのかというとこの推定勝利数と実際の勝利数と比べることで
「リード時の7回に投げた投手によってチームに何勝分増やすことができたか」が分かるというわけです。
勿論7回の部分を8回、9回に置き換えれば8回、9回も同じように求められます。
その計算方法ですがソフトバンクを例にすると
登板機会数×リーグ平均無失点率×無失点勝率+登板機会数×リーグ平均失点率×失点勝率
55×0.77×0.98+55×0.23×0.75 =50.99(推定勝利数)
実際の勝利数は登板機会数55のうちの52なので
52-50.99 =1.01
これがソフトバンクの1~3点リード時の7回に投げた投手による利得ということになります。表のWGがこれにあたります。
ちなみにこのWGとは「勝利利得」から僕が勝手に作った略称で実際このような指標があるわけではありません。
8回の投球結果
9回の投球結果
8回と9回はこのようになりましたが、実は9回のほうで一部データの補整をした箇所があります。
というのもソフトバンクと楽天に関して9回に失点した回数があまりに少なく(2回、1回)
そのまま計算するとあまりに極端なデータが出てしまうため、この2カ所だけは失点勝率をリーグ平均失点勝率に置き換えて
計算を行いました。そのためこの2球団のWGは補整後のデータとなっています。
ここまで推定勝利数という考え方から7~9回の投手力を出してきましたが、1~6回の投手力を出すことも出来ます。
ただ先ほどと少し違うのは1~6回は1イニングごと分けたものではなく6イニング分の投手力として
また1~3点リード時といった条件はなくこちらは全試合を対象としました。
そのため十分な母数が確保できたということもあり各球団の6イニングの失点数は
無失点、1失点、2失点、3失点、4失点、5失点、6失点以上の7種類のデータから求めています。
(本当は7~9回でも条件を細かく分けたかったのですが母数の都合上無失点・失点のみの分類にせざるを得ませんでした。)
1~6回の投球結果
上が各球団の6回n失点だった時の勝率、下が各球団の6回n失点になった割合です。
失点数が増えるにつれ勝率が下がっていくのは各球団共通で当たり前の傾向ですが
同じ失点数でも球団ごとの勝率に差がついているのは先ほど同様そのチームの打力やそれ以降の投手力の差ということになります。
1~6回の投手力の求め方も失点数のデータが2種類から7種類に増えたところが異なるだけで
「もしも1~6回に投げる投手がリーグ平均レベルだったら」という計算上の推定勝利数を出し実際の勝利数と
比べるというとこはまったく一緒です。
投球による勝利利得
計算するとこのようになりました。7~9回の数値は始めに出した7回、8回、9回の勝利利得(WG)の合計値です。
前回出したリード時勝率でもおおよその各球団の終盤の投手力は分かりましたが、打力の影響を排し勝利数単位で数値化した
今回のデータのほうがその貢献度が直感的に分かりやすくなったものと思います。
貢献度を勝利数単位で表す指標と言えばWARがお馴染みですが、WARは定量的な指標であるがゆえに救援投手が過小評価
されているといった指摘もあります。今回の分析ではまだ個人評価に落とし込むというところまでは至っていませんが、
イニング終了時の勝率から貢献度を求めるというWARとはまた違ったアプローチで投手力を分析することは可能で
またそれが意味のあるデータとして出せるのではないかと分析の中で感じました。
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